2019 年の相次ぐ災害。雨の予報に肝を冷やすことが多い年となりました。
こうも災害続きだと、停電の備えは欠かせませんね。
人工呼吸器ユーザーの娘と暮らすわが家では、ポータブル電源で災害時に備えております。
ポータブル電源は発電機や蓄電設備よりも安価で取り扱いも手軽。
そのうえ普段使いにも重宝する優れものです。
場所もとらないので、2、3 台あってもいいかなと考えています。
というわけで、在宅用医療機器に使用可能なポータブル電源を調べてみました。
在宅医療・医療的ケアに適したポータブル電源5機種
在宅医療機器に適応するポータブル電源 5 機種を一覧にしました。
比較検討のご参考にどうぞ。
製品名 | SmartTap PowerArQ | Jackery ポータブル電源 1000 | Jackery ポータブル電源 700 | BESTEK ポータブル電源 | suaoki ポータブル電源 G1200 |
電池容量 | 626(532)wh | 1002(802)wh | 700(660)wh | 648(504)wh | 1200(973)Wh |
AC 出力機能 | 100V/2A : 1 口 | 100V/10A : 3 口 | 100V/5A : 2 口 | 100V/10A : 2 口 | 110V/10A : 2 口 |
サイズ(cm) | 30 × 24.2 × 19.3(cm) | 33.2 x 23.25 x 24.3(cm) | 30 × 19.3 × 19.2(cm) | 36.6 × 25.7 × 25.7(cm) | 53 × 39 × 26.5(cm) |
重量 | 6.0 kg | 10.6 kg | 6.3 kg | 13.0 kg | 12.6 kg |
価格 | 66,000 円 | 139,800 円 | 79,800 円 | 59,800 円 | 169,880 円 |
電池容量のカッコ内の数値は、実際に使用可能な容量の予測値です。
予測値と変換効率は、メーカーが発表している出力可能時間から母が割り出しました。
ただし、パワーアークだけはメーカー発表値をそのまま記載しております。
DC とか AC 変換とかって何?というあなたへ。
参考サイトはこちらです
なお、こちらでご紹介しているポータブル電源は、母が「これならわが家で使いたい」と思う製品をラインナップしております。
お買い求めおよびお取り扱いは自己責任でお願い申し上げます。
安全性や気になる点の確認などは直接メーカーのほうへお問い合わせいただきたく存じます。
【停電・災害】蓄電池の代わりにポータブル電源という選択
ポータブル電源とは、その名の通り持ち運べる電源です。
蓄電設備を備えるのが難しいご家庭にもってこいの災害対策ツールです。
なかには車のシガーソケットやソーラーパネルから充電できる製品も。
一覧では次の条件を満たす、在宅医療機器を使用できるであろう製品を取り上げています。
- 大容量電池
- 正弦波
- BMS 採用
ここからは条件の詳細とその理由を書いていきます。
ポータブル電源条件①電池容量は626Wh以上
電池容量 626Wh(ワットアワー)ってエライ具体的な数字ですが、
実はこれ、わが家のポータブル電源の容量を最低ラインに据えております。
わが家のポータブル電源は PowerArQ(パワーアーク)。
コンパクトなのに大容量、オシャレなルックス。アウトドア好きに人気を博している製品です。
しかし呼吸器っ子の非常用電源にこれ 1 台では、万全の備えとは言い難い。
これから購入を考えるなら、より高スペックなポータブル電源を手に入れたいところ。
ゆえにここではパワーアークのスペックを最低ラインとしたわけです。
ポータブル電源条件②安定した正弦波
正弦波とは、家庭用コンセントと同じ波形の電流です。
波形については以前の記事で触れておりますので、よろしければご覧ください。
車で遠出するなら電源確保はマスト。人工呼吸器ユーザーあんじの母です。ディズニーシーへ行ってまいりました。わが家から夢の国までは 2 時間弱。果たして、人口呼吸器ユーザーはいかにして車で長旅をするのか。良い旅を[…]
安定した波形の電流が得られないとして、かつてはポータブル電源を在宅医療機器に使用することは敬遠されていました。
しかし今回ご紹介するポータブル電源は、いずれも家庭用コンセントと同様の正弦波で給電できる製品です。
あらゆる技術は日進月歩なり。
ポータブル電源条件③安全第一BMSは必須
BMS とは、バッテリーマネージメントシステムの略です。
BMS は、次のようなリスクから接続機器を保護します。
出力ショート
以上温度
入力電圧低下
入力過電圧
一応、必須条件として挙げてはみましたが、もしかすると BMS が搭載していないポータブル電源なんてないかもしれません。
上記を見る限り、BMS が搭載していない機種なんて危険すぎですもんね。
在宅医療機器に必要な電力量は?アンペアをチェック
ポータブル電源を購入する前に、日常に必要な電力量を知ることが重要です。さっそくご使用中の在宅医療機器のアンペア数をチェックしてみましょう。
ここではわが家のあんじを例に在宅医療機器の必要電力量を計算してみます。
例:呼吸器っ子の消費電力量
- 人工呼吸器(トリロジー 100):2.1A
- 加温加湿器:1.5A
- 在宅酸素濃縮器:0.8A(1L/h 時)
- たん吸引器(スマイルキュート):1.1A
必要電力量概算:5.5A×100V=550Wh
あんじの在宅医療機器すべてを稼働させた場合、電力消費量は 550Wh。
したがってわが家のパワーアーク(電池容量 532wh)ではもって 1 時間です。
これでは非常時の備えには足りません。しかし、優先度の高い機器だけに給電するならばどうでしょう。
ポータブル電源の電力消費量を最小限にする方法
まずは給電の優先順位を決めます。これはわが家の場合。
- 人工呼吸器
- 加温加湿器
- 酸素濃縮器
- たん吸引器
次に、優先順位の低い順から給電方法や使用手段を切り替えていきます。
給電優先順位4位:たん吸引器
たん吸引器スマイルキュートは専用バッテリーに切り替えます。
スマイルキュートのバッテリーが切れたら、たん吸引器キュータムの出番です。
キュータムは専用バッテリーいらず。なんと単三乾電池で作動します。
乾電池なら備蓄が多く、災害時でも手に入りやすいので、吸引に困ることはありません。
給電優先順位3位:酸素濃縮器
わが家の酸素濃縮器は停電するとバッテリー駆動になる機種です。
ですのでバッテリー(たぶん 1 時間くらいもつ)を使い切ったら酸素ボンベに切り替えます。
ただし、酸素ボンベの残本数が少なければ優先順位は繰り上がります。
給電優先順位2位:加温加湿器
人工呼吸器用の加温加湿器を人工鼻に切り替えます。
ただし、人工鼻では加湿が足りずたんが固くなりやすいのがネックです。
たん詰まりのリスクヘッジとして、わが家では 2 時間に 1 度はネブライザーで加湿します。
またフィルターが湿りすぎると体感的に吸気圧が低くなるようなので、人工鼻の交換も必須です。
これらを加味すると、加温加湿器の優先順位は限りなく 1 位に近い 2 位といえるかもしれません。
給電優先順位1位:人工呼吸器
何を差し置いても最後まで給電しておきたい在宅医療機器といえば、やはり人工呼吸器です。
人工呼吸器だけならば、ポータブル電源で 3 時間弱の給電ができます。
これだけの時間が稼げれば、荷物を準備し、あんじを病院に避難させるには十分です。
在宅医療機器の消費電力の調べ方と計算方法
在宅医療機器のアンペア数は本体裏や取扱説明書に記載されています。
よくわからない場合は、ネットで検索してください。
困ったときのグーグル頼み。現代ツールの恩恵にあやかりましょう。
消費電力の計算方法は以下の通りです。
※ VA とある場合は W と同じ意味です。
デバイスへの平均的な電流は定格電流より小さいよ
さまざまなデバイスに示されている定格電流とは、流しうる電流の上限値に過ぎません。
ゆえにここでは各デバイスの電力消費量を「概算」として算出しております。
たとえばトリロジー 100 なら定格電流 2.1A と表記されています。
これは製品を安全に使用できる電流が 2.1A 以内であることを指しています。
すなわちトリロジーが常に 210 Wh の電力を消費するという意味ではありません。
電池消費量はデバイスの稼働状況によって前後します。経験則では概算より下回ることのほうが多いです。
理論値を過信せず、概算の 8 割程度と見積もって行動するが吉かと思います。
ちなみにフル充電状態のトリロジー 100 に 1 時間給電したところ、わが家のパワーアークは 48Wh の電力を消費しました。
つまり理論値では 11 時間は給電し続けられるということですかね。
ポータブル電源は避難場所までのつなぎ
あくまでもポータブル電源は臨時措置にすぎません。
くれぐれも時間稼ぎ以上の期待はせず、災害時には病院を頼りにしてください。
病院へ向かうことが困難な場合には、銀行や学校などに一次避難し、電源を借りることも考えましょう。
ポータブル電源を使い慣れることも備えのうち
いざというとき、在宅医療機器とポータブル電源を誰がどうやって運ぶか。
災害時のシミュレーションはとっても大切です。試してみて初めて見えてくる課題もあるかと思います。
たとえば車での移動や、散歩やレジャー施設周遊といった野外活動などなど。
日常生活でポータブル電源を使い慣れておけば、有事にも慌てず行動できるかもしれません。
シミュレーションといえば、9.11 アメリカ同時多発テロ事件での教訓が思い出されます。
テロの標的になったビル群のなかでも、ワールドトレードセンター南棟では多くの人々が生還しました。
あの惨状において「生還者の階段」を降りることができたのは、ひとえに避難訓練の賜物だという話です。
繰り返し訓練し、非常時のシミュレーションができていたからこそ、あのパニックの最中でも速やか行動できたのだとか。
シミュレーションがいかに重要かはこの事例が示すところです。
余談が長くなりました。ではでは、これにて。