はじめまして、当ブログ管理人あんじ母と申します。
このたびは、わが娘が患う疾患を広く世に知らしめすべく、当ブログを開設いたしました。
娘の疾患はムコリピドーシスⅡ型、またの名を「アイセル病(I-cell病)」といいます。
当記事はアイセル病に関する情報がメインです。
随時改稿していくため、読むタイミングによってはめちゃくちゃ長いかもしれません。
アイセル病の概要だけをさらっと読む場合は、下のボタンから最後のまとめに飛んでくださいませ
なお、当記事は関連文献やアイセル仲間の情報、娘のたどってきた経緯などをもとにまとめております。
便宜上、専門的な解説も含んでおりますが、完全なる素人講釈です。
あしからずご了承くださいませ。
それでは、アイセル病について記してまいります。
ムコリピドーシスⅡ型/アイセル病ってどんな疾患?
アイセル病は、先天性代謝異常症のひとつです。国の指定難病ライソゾーム病 に分類されます。
細胞内にあるライソゾームで物質が代謝されない影響により、全身にさまざまな症状を引き起こす疾患です。
代謝ってなに?
代謝というのは、生き物の生命活動を支える化学反応です。
生き物の細胞内では合成や分解、エネルギー交換といった化学反応が、絶えず起き続けています。
これらの化学反応すなわち代謝に欠かせない材料が、酵素です。
すべての代謝にはさまざまな酵素があらゆる形でかかわり、それぞれが作用し合って役割を果たしています。
したがって、もしなんらかの理由で働かない酵素があれば、その酵素にかかわるほかの酵素も連鎖的に働かなくなってしまうのです。
酵素が働かなければ代謝は起きません。それゆえ、代謝されなかった物質は細胞内にたまってしまいます。
アイセル病の場合は、ライソゾームに酵素を運ぶための酵素機能が欠けています。
アイセル病の代謝異常の原因は?
アイセル病の代謝異常の原因は N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ触媒サブユニットの欠損です。
これにより、ライソゾーム酵素がライソゾームに運ばれるために必要な化学反応が起こりません。
したがって、すべてのライソゾーム酵素が欠損します。
詳しくはこちらへ
ライソゾームってなに?
ライソゾーム(リソソーム)は細胞小器官(オルガネラ)のひとつです。
ライソゾームでは数十種類の酵素がかかわり、細胞内のゴミを分解、処理しています。
酵素のどれかが欠けたり働きが不十分だったりすると、代謝は正常に行われません。
ちなみにライソゾーム病というのは、ライソゾームにかかわる代謝異常症の総称です。
ライソゾーム病のなかでも、アイセル病とムコ多糖症は特徴がよく似ています。
アイセル病を知るにはまず細胞から
細胞は生物の基本単位です。細胞のかたまりが生物であるともいえます(たぶん)。
細胞内には、原形質という細胞機能の基礎となる物質があります。
この原形質のうち、代謝や細胞分裂といった細胞活動のほとんどが起こるのが細胞質です。
細胞質には主な要素が 3 つあります。
細胞質基質(細胞質ゾル)と細胞小器官(オルガネラ)、そして封入体(細胞内含有物)です。
細胞質基質ってなに?
細胞質基質とは、細胞質から細胞小器官と封入体を除いたすべてのゾーンを指します。
代謝や細胞分裂といった細胞内の活動の場です。細胞質基質は細胞内の体積のおよそ 70 %を占めます。
細胞小器官ってなに?
細胞小器官はいわば細胞内の臓器です。
ライソゾームやリボソーム、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体、中心体などがあります。
たとえばライソゾームは細胞内の消化器です。糖質や糖脂質を分解します。
封入体ってなに?
封入体は、細胞内で異常な物質が集まってできる不溶性の塊です。
糖質や脂肪、タンパク質、ウィルス、細菌、異物などでできています。
代謝にかかわることはなく、封入体そのものが活動することもありません。
ただし封入体を含む細胞は、代謝や細胞分裂などの活動が損なわれることがあります。
また封入体自体に毒性はないとされるものの、ときに細胞死を招いたり、さまざまな疾患の原因になったりもします。
アイセル病患者のルックスの特徴
アイセル病患者は顔も体つきも特徴的です。全体的にまるみを帯びたシルエットがキューピーに似ています。
骨格は垂涎モノの愛らしさです(個人的見解)。
レントゲン写真なんてもうたまりません(個人的見解)。
ついでに性格はかわいさ余って憎さ 1000 倍です( 個人差アリ?)。
その特徴的なルックスを顔と体に分けてまとめました。
特徴的な顔つき
- 顔 丸くて平たい
- 目 でっかい
- 鼻 ちっさい
- 口 でっかい
- 舌 でっかい
こういった顔つきをガルゴイル(ガーゴイル)顔貌と表現するようです。
特徴的な身体つき
- 身長 90 センチ程度
- 首 とっても短い
- 手 指は長くて節が目立つ
- おなか まぁるい
まごうことなくキューピー体型です。
アイセル病の症状は?
アイセル病患者の出生時から成長過程で発生する症状は以下のとおりです。
- 股関節脱臼
- 胸部変形
- 鼠径ヘルニア
- 精神遅滞
- 発育障害
- 歯肉・下肥大
- 心臓・肝臓・脾臓肥大
- 角膜混濁
- 四肢拘縮
- 気管支狭窄
- 呼吸器感染症
- パーキンソニズム
アイセル病は進行性の疾患で、症状は全身に及びます。
娘やアイセル仲間の経過を見ると、心不全や呼吸不全による急変が多い印象です。
アイセル病の治療法は?
アイセル病に根本的な治療法はありません。支持療法および対症療法あるのみです。
ただ、過去にはイソフラボンに疾患の進行を抑える効果があるとして、積極的な摂取が推奨されたことがありました。
しかし残念ながら、効果の程を耳にしたことはありません。
唯一、効果が期待できるとすれば造血幹細胞移植です。
とはいえ、過去の成績を見る限りでは、リスクに反して予後は芳しくありません。
アイセル病は遺伝するの?
アイセル病は、常染色体潜性(劣性)遺伝です。
原因遺伝子を持つ両親の間に 4 分の 1 の確率で発生します。
なお、原因遺伝子は GNPTA(4q21-q23)です。
潜性遺伝の疾患は、親に症状が現れることはありません。
ゆえに子の発症なく自分が保因者だと知ることはほとんどないと思います。
無論、母体の妊娠中の生活を引き金に子が発症することもありません。
アイセル病をまとめたよ
以下、アイセル病の概要です。
- 先天性代謝異常症だよ
- 指定難病ライソゾーム病の一種だよ
- 病因はN-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼの異常だよ
- 潜性遺伝だよ
- 原因遺伝子は GNPTA(4q21-q23)だよ
- 骨の変形と関節の拘縮があるよ
- 身長は 90cm 前後でキューピー似だよ
- 運動機能と知能の発達が遅いよ
- 手の指は長くて左利きが多いよ
- 体や内臓の一部が肥大するよ
- 呼吸器感染症が頻繁だよ
- 根本的な治療法はまだないよ
アイセル病を理解する上で使用した資料たちをこちらに羅列いたしました
よろしければ当記事の補完にご利用くださいませ。
アイセルっ子の成長をチョイ見せ
映像はわが家のアイセルっ子、あんじの最近の様子です。
ヤングコーンやとうもろこしの皮むきを手伝ってくれるようになりました。
お手伝いをする意欲が芽生え、初めての作業に挑戦する娘の姿に母は感動しきりです。
とはいえ、どうしても頭から離れない事実に苛まれるときもあります。
アイセル病はどうしたって進行性です。
それゆえこうしてできるようになったこともあれば、残念ながらできなくなったこともあります。
徐々に増えていく「娘ができなくなったこと」にやるせなさが募ることもしばしばでした。
けれど近頃は、娘のあらゆる変化に対応すべく策を講じるのが楽しいくらいです。
ある日をさかいに、娘は自力で呼吸することすらままならなくなりました。
人工呼吸器と酸素ボンベ、吸引器が欠かせない生活は不便で不自由です。
ところがそんなことはどこ吹く風。
娘はお手伝いを覚え、勉強に精を出し、友人とのコミュニケーションを楽しみ、大人をあごで使う。
そんな聡い女のコに成長しています。
衰えた機能はあれども、娘に「できること」は増え続けているのです。
娘の挑戦は、いつも母に打ち震えんばかりの喜びを与えてくれます。
そんなもんで、「娘ができなくなったこと」など取るに足らんわけです。
さいごに
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。
このメモが、あなたにアイセル病というものを知っていただく機会になれば幸いです。
もし内容に間違いやわかりにくい点などがございましたら、ご指摘のほどよろしくお願い申し上げます。
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なるべ~~く早く修正いたします。
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なにとぞよしなに。ではでは。