Anji's-15th-birthday

15歳になったあんじはアイセル病でも人工呼吸器でも元気でおしゃべりな食いしん坊

Anji's-15th-birthday

2020年9月15日。わが娘あんじは、めでたく 15 歳になりました。

ついにあんじが、あの、あんじが!

15歳です。

これは、これは、

盛大にお祝いせねば…!

なんて思いが頭をよぎったりよぎらなかったりして迎えた誕生日当日。

どれだけ気合をいれて準備したかってそらもう聞くも涙語るも涙の思い出深いたn

ケーキを食べてお祝い終了。

なんと記念すべきあんじの生誕15周年記念日はせせらぎのごとく過ぎ去ったのでございます。

娘よ。面目ねぇ。

せめて日記くらい誕生日当日にしみじみ書いておけばよかったなぁ。

あんじへの、

15 年分のあふるる思いををを。

と悔いがありましたもので、半月遅れで不肖、母。

いまさらながら日記を書き綴ります。

誕生日云々じゃなくて「きょう」がスペシャルなんだってば

あんじが 15 歳を迎えるまでにはさまざまな奇跡が、散々な軌跡がありました。

あんじのこれまでを思い出すと、医療ドラマも真っ青なエピソードばかりです。

5 歳まで生きられるかどうか。とか、この先は集団生活を送るのは諦めて。とか、

自宅での生活はもう難しい。とか、もう 2 度と意識を戻せないかもしれない。とか、

また倒れたときは今度こそ覚悟を。とか、もう麻酔は使えないからオペはできない。とか。

さんっざん言われてきたなぁあんじさんよぉ。

とにかく思い出はモノクロームというか漆黒というか、

そんな道程だったわけだけれそも、まあ~よくぞきょうまで生きてきてくれたっ。

と、毎日、毎日、思っているのです。

だから、ね、つまり、誕生日にこだわらずとも、あんじは毎日がスペシャルというわけでして。

きょうがあって、明日もくる。このすばらしさ、噛みしめる喜び。

あんじさんよ、わかるかい?母のこの痛切な思いが。

心に響いちゃったり、しないかい?

病院育ち、家ぐらしのアンジッティ

いまだに夢に見る時があるんですよ。

あの日あの日あの日とかあの日あの日であるとかあの日だったりを。

誕生日を記録するならステキなエピソードのひとつも出したいものですが、

やっぱり思い浮かぶのは長かった病院での日々、日々、日々なのです。

ところがこの 2 年ほどは、これまでの軌跡が嘘だったかのようにハツラツと在宅生活を送っているではありませんか。

安眠を妨害し不穏な夢を消し飛ばしてくれる、あんじの寝息、イビキや寝言。

夜間はあんじの存在を存分に感じられる時間帯です。あんじは、

鼻の吸引して痰の吸引して(呼吸器の)回路の水(結露)とって

牛乳持ってきて冷たいの(アイスノン)替えて毛布かけて

と、いつも母の安眠をふんだんに妨害してくださいます。

失われていた家族の時間をみるみる取り戻しているようで、母は感無量、ときに憤懣ふんまんる方無いのであります。

エマージェンシーは突然にin2019

きょうも元気ハツラツたらふくメシ食うわが娘。

と思いきや、昨年末は唐突に命の危機に見舞われましたね。

久々の救急搬送、入院と相成りました。

呼吸器や酸素濃縮器の音すらしない夜は、もはや静かすぎて眠れません。

普段は押し込めている病状への不安が、嫌が応でも襲いかかってきます。

あんじの病は進行性の急変型。不測の事態があれば病院から連絡が来る。

無事に朝が訪れますように。そう願いながら迎えた朝は、いつもどおり眠いのでした。

ハイパースペシャルな日用品をあなたに

年末のそんな出来事も、今やどこ吹く風。2020 年のあんじってばハチャメチャに元気です。

なにせ思春期まっただなかの受験生( 一応)ですので、15 歳の覇気がスパークしております。

雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、感染症ヲモ物トモセズ。

元気なあんじが当たり前になった昨今では、毎日のスペシャル味が薄れてきている感すらあります。

「毎日がスペシャルなら、誕生日はハイパースペシャルにするもんだがや。」

そんな声が風にのって聴こえたような気がしないでもないですが、なんと母、

ハイパースペシャルな日にするどころか、プレゼントすら用意いたしませんでしたのよ奥さんったら。

というのも、あんじにはすでにバガブーのバギー と電動車いす WHILL(ウィル)を授けているからであって。

「生活用品とプレゼントは別だべさ。」

そんな声が風にのって聴こえたような気がしないでもないですが、なんと母、

ただいまスペシャルにノーマネーなのであって。

なんだってあんじの、呼吸器っ子の生活用品ってあんなにもエクスペンシヴなんでしょう。

別件ですが、今月は車検と任意保険の更新などもございましたもので、

なんかもう

生きているのが精一杯というか息しているのが不思議なくらいノーマネーな母なのです。

まあそんな内情はさておき、あんじは電動車いす WHILLウィル がハイパースペシャルにお気に召したようでして。

借りたウィルで走り出す行き先もわからぬまま

WHILLウィル を操るあんじは、まさに水を得た魚。見る間に運転技術を習得し、己が気の向くままに道を進みます。

あんじのそんな姿に、母も長年の胸のつかえが下りました。

「なんであんじは歩けないの?」

母にそう尋ね、自由に歩き回る友人を不思議そうに眺めていたあの日から 10 年。

ずいぶんと時間はかかりましたが、あんじはようやく自由に動く手段を手に入れたのです。

ブンブン進む電動車いす。危惧すべきは物損事故に人身事故。

あんじの自由の代償に、母の胃が痛む事案は増えることでしょうええそうにきまっています。

急がれる運転技術および交通リテラシーの習熟。ああ、この先人生初の迷子事件もあり得るかもしれません。

崖の上のポニョ系のぽっちゃり女子、近未来的な電動車いすで暴走。

もしあなたがそんな現場に出くわしたならば、Twitter にてご一報いただければ幸いです。

不肖、母。そのぽっちゃり女子を回収に伺います。

果たして 15 歳になり自由を手に入れたあんじは、いったいいつソロ活動を始めてしまうのか。

想像しただけで恐ろしく、胃が悲鳴をあげそうですマンドラコラばりに。

まさかこんな心配をする日が来るだなんて。嬉しい悲鳴―――と、申しておきましょう。

青天の霹靂、豊穣もたらしたり

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10 年前には夢にも思ってもなかったことが起きている(良くも悪くもあらゆる意味で)、そんな 2020 年です。

兎にも角にも、あんじの成長や未来への希望をこんなにも感じた誕生日はいまだかつてございません。

可能性はテクノロジーで無限に広がる。15 回目にしてハイパースペシャルな感動を覚えました。

「それなのにバースデーパーリーをしないって。いったいどういう料簡よ?」

そんな声が風にのって聴こえたような気がしないでもないですが、

短命と言われて久しいアイセル病のあんじは、いわば 10 年を超えるロスタイムを生きているようなもの。

すなわち毎日がスペシャル。誕生日だってそのうちのただの 1 日に過ぎません。

実りある日々に感謝感激雨あられ。きょうも元気に米がうまい。

やっぱり素直が一番だし詫びとサビが大事だなって

apology-and-chorus

…………なんて。

御託を並べるのもさすがに心苦しくなってきました。そろそろ素直な気持ちを吐き出します。

あんじさん、

15 歳の誕生日をぞんざいにスルーしましたこと心よりお詫び申し上げます。

A メロ B メロではグダグダと屁理屈を述べて参りましたが、やはりサビは心からシャウトさせてください。

誠に申し訳ございませんんんっ

つぎこそは、

つ、ぎ、こ、そ、は!

必ずやあんじ様の生誕祭を盛~~大に、ハイパースペシャルに執り行わせていただきます。

ゆえにそれまでは、どうかユカイツーカイかつスペシャルな毎日でもご堪能くださいませ。

「それまでは」と申しましても、スペシャルな毎日は誕生日以降も続きますのでどうぞご安心を。

いくつ年を重ねようと、どんな変化が訪れようと、どこまでもスペシャルな日々を過ごしてまいりましょう。

きょうも、あしたも、この先ずっと、ずーーーっと。

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見ないで… |ω·`)